英語圏の文化では、人がくしゃみをした際に「Bless you.」と声をかける習慣があることはよく知られています。
この一見単純な習慣には、実は複雑で魅力的な歴史が隠されています。
なぜ英語圏ではくしゃみにこの言葉を贈るのでしょう?
この記事では、その語源と由来を深掘りし、古代ローマから中世のヨーロッパ、さらには現代に至るまでの変遷を解説します。
ペストが蔓延する中での宗教的な祈りから、魂の保護、悪魔の追放、さらには医学的な迷信に至るまで、この習慣がどのように発展し、人々の間で広がっていったのかを紐解きます。
この記事を読むことで、あなたは日常の些細な習慣の背後にある豊かな歴史と文化を発見することができ、次に誰かがくしゃみをしたときに「Bless you」と言う際には、その背景に思いを馳せることでしょう。
さぁ、この一言に隠された物語を探る旅に出ましょう。あなたの見方が変わるかもしれません。
くしゃみと”Bless you!”の伝統
アメリカをはじめとする英語圏の国々では、人がくしゃみをすると、周りの人が「Bless you.」と声をかけるのが一般的です。
この「Bless you.」は、本来「God bless you.」と言われ、「神のご加護を」という意味が込められています。
くしゃみに対して使われる場合、日本語で「お大事に」と同様の意味合いで捉えられます。
しかし、この慣習の正確な起源ははっきりしていませんが、以下の四つの説が有力とされています。それぞれを見てみましょう。
くしゃみに”Bless you”を言う背景の4説
くしゃみに対する「Bless you.」の慣習は、次の4つの由来が考えられています。
古代ローマのペスト説
590年の古代ローマ時代にペスト(黒死病)が流行した際、医療が発展していなかったため、くしゃみはペストの兆候と見なされていました。
この時代の教皇、グレゴリウス1世が、くしゃみをした人に対して「神のご加護を(God bless you.)」と祈ったことが、「Bless you.」の始まりだと言われています。
ただし、この説自体が真実かどうかは確定していないため、絶対的なものではありません。
魂が抜けるのを防ぐ説
中世には、人がくしゃみをすると魂が口から抜け出すと考えられていました。
その抜け出た魂を悪魔が奪うのを防ぐために、「Bless you.」と言って悪魔を追い払うという習慣が生まれたとされています。
悪魔を追い払う説
似たようなもう一つの説は、くしゃみをすることで人から悪魔や悪いものが出ていくという考えがありました。
その悪いものが体に戻る前に、「Bless you.」と言うことで、それを遠ざけるという理由からこの慣習が始まったと言われています。
心臓の鼓動を促す説
昔の医療では、くしゃみをすると心臓が止まるという説もありました。
もし心臓が止まったとしても、それが再び動き出すよう助ける意味で「Bless you.」と声をかける習慣があったとされています。
まとめ
英語圏で人がくしゃみをしたときに「Bless you」と言う習慣は、古くからありますが、その起源には複数の説が存在します。
一つは、590年の古代ローマ時代にペストが蔓延していたころ、くしゃみが疾患の前兆と見なされ、教皇グレゴリウス1世が「God bless you」と祈ったことから始まったとされます。
しかし、この話の真偽は明らかではありません。
また、中世の文化では、くしゃみをすると魂が体から逃げ出すと考えられ、その魂を悪魔が奪う前に「Bless you」と言って守る習慣があったとも言われます。
同様に、くしゃみが悪魔や不浄なものを体外に追い出す行為と見なされ、「Bless you」はそれらが体に戻るのを防ぐための言葉だったという説もあります。
加えて、くしゃみをすると一時的に心臓の鼓動が止まるという誤った医学的信念があり、「Bless you」と言うことで、心臓が再び正常に動き始めるよう祈る意味があったとされる説も存在します。
これらの説は、文化や時代を超えて受け継がれてきた人々の信念や願いを反映しており、英語圏における「Bless you」という習慣は、様々な由来を持つ、長い歴史の中で形成されたものであることがわかります。